この記事では、いすゞ自動車とボルボの提携の目的とその影響を書いています。また、いすゞ自動車の業績や財務を投資家の目線で分析しました。
いすゞ(7202)ボルボとの提携は命綱だった。【株価分析】
この記事の要点です。
- ボルボから技術提供がなければいすゞの未来はなかったが
- 買収した不採算事業のUDトラックをどう扱うのか。投資家はマイナス材料としてみている。
- 業績は横ばい
- 収益力は他社より優れており、財務も健全
- 株価割安だが、好材料が出にくい
企業情報
まずはいすゞの企業情報について
社名 | いすゞ自動車 |
設立 | 1937年 |
本社所在地 | 東京都品川区 |
代表取締役社長 | 片山 正則 |
決算月 | 3月 |
従業員数 | 連結 37,263人 |
大株主 | ・自社 ・三菱商事 ・伊藤忠自動車投資合同会社 |
言わずと知れた、いすゞのトラックです。
小型トラックの売り上げは国内首位となっています。
海外にも展開しており、アジア、欧州、アフリカ、中南米に輸出しています。中でも圧倒的に売り上げが大きい国はタイです。
ボルボとの提携は一喜一憂
12月18日、いすゞ自動車はボルボと業務提携し、ボルボの子会社であるUDトラックスを買収することが発表されました。
買収時期は2020年末をメドとされています。
◇提携に至った背景
日本国内のトラックは「いすゞ自動車」、「日野自動車」、「三菱ふそう」、「UDトラックス」の4社がシェアを獲得しており、その中でいすゞは首位を維持していました。
しかし、近年5GやAIの登場により自動車業界には※CASEを意識した事業展開を強いられるようになっていました。
※CASEは、Connected(コネクテッド)、Autonomous(自動運転)、Shared & Services(カーシェアリングとサービス/シェアリングのみを指す場合もある)、Electric(電気自動車)の頭文字をとった造語
日野自動車はトヨタの子会社であり、FWグループとの提携をしています。三菱ふそうは世界的自動車メーカーのダイムラーの子会社です。この2社には乗用車の自動運転を手掛ける強大なバックがいるため、トラック専門の単独企業であるいすゞ自動車に勝ち目がない状態でした。
そこでいすゞは生き残りのためにCASEで他社の一歩先を行くボルボとの業務提携に至ったのです。
◇いすゞへの影響
いすゞはボルボに自動運転などの技術を求めて提携しますが、同時にボルボ傘下のUDトラックスを買収することも決定しています。利益は低迷しており、UDトラックスの事業価値は2500億円とみられています。
UDトラックスは大型トラックに強く、いすゞは中小型トラックに強みがあるためとても効率のよい提携だと発表していますが、本当にそうでしょうか。。
ボルボからしたら不採算事業を2500億円で買ってくれてラッキーって感じですよね。。笑
ちなみに買収が発表された翌日、いすゞの株価は下落しています。株主からは負担になるのではないかと警戒されていますが、買収後の舵取りをどうするか、腕の見せ所ですね。
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株価は割安だが。。
いすゞ自動車の5年チャートです。
引用:Yahoo!ファイナンス
株価 | 1,288円 | 時価総額 | 10,967億円 |
PER | 10.6 | 信用倍率 | 0.77倍 |
PBR | 1.01 | 外国保有率 | 14.7% |
配当利回り | 2.95 | 浮動株 | 2.1% |
・5年でみると現在の株価はかなり低い状態です。PER、PBRも低いので割安です。
・株価が下がっていることもあり、配当利回りは割と高いです。ちなみにここ10年の減配はありません。
・日本では個人が自動車を買わなくなる時代になってきていますので、自動車業界は全体的に株価が下がっています。乗用車は厳しいですが、法人向けのトラックならば今後も需要はあるかと思いますので、押し目で狙ってもいいかと思います。ただ、自動運転技術が開発段階なので、成果が実るのはだいぶ先になりそうです。
売上高は8期連続増加の見込み
下図はいすゞ自動車の過去5年間の業績です。

・利益は横ばいですが、売上は増加しています。グラフでは5年間までですが、業績を遡ると2020年で8期連続増収となることがわかりました。
・進捗率は2Qで47.1%です。去年は49.4%、一昨年は47.7%だったので下回っています。
・国内では好調だが、海外では市況悪化のため販売台数減。
収益性は良好
いすゞ自動車の収益力に関する指標をまとめました。
営業利益率 | ROE | ROA | |
2018.03 | 8.05 | 12.16 | 5.35 |
2019.03 | 8.23 | 12.27 | 5.41 |
2020.03 | 6.94 | 9.55 | 4.25 |
・タイバーツ高(為替)の影響で利益減となったことが利益率低下につながったようです。
・自動車業界の中では営業利益率、ROAは高い水準です。ライバルの日野自動車にも勝っています。
財務も良好
総資産 | 21,011億円 |
自己資本比率 | 44.8% |
利益剰余金 | 8,973億円 |
有利子負債 | 2,871億円 |
設備投資 | 980億円 |
減価償却費 | 630億円 |
研究開発費 | 1,010億円 |
・自己資本比率は44%なので倒産リスクは少ないです。利益剰余金も多いです。
・設備投資、研究開発費も多く見えますが、利益が毎年800億円ほどあるので、そこまで負担にならない額です。調べてみたら日野自動車の方が利益に対する設備投資割合が多かったです。
まとめ
・トラック市場では国内首位
・ボルボの最先端技術を提供してもらえる
・収益性は他社より優れている
・財務良好
・株価割安
・UDトラックスが重荷となる可能性がある
・海外で伸び悩み
以上になります。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。